大博通りの一本裏を並行して走る「御供所(ごくしょ)通り」をご存知でしょうか?昔はたくさんのお寺があったという御供所町と上呉服町を結ぶ道。
今でもいくつかの広大な敷地のお寺がひっそりと佇んでいるが、それほど人通りもなく、物静かな下町通りという印象。
以前は個人商店が立ち並ぶ活気ある通りだったようだが、近年は店がほとんどなくなり、口を閉ざしたようにシャッターが並ぶ景色になっていた。
しかし、ここ数年で、面白い動きがいくつか出てきた。
デザイン事務所やカメラマンのスタジオなど、いわゆるクリエイティブな職業の人たちが、静かな通りと緑豊かなお寺の環境、天神エリアよりも手頃な賃料に惹かれ、オフィスを引越してきたのだ。
PHOTO: SHINYA MATSUSHIMA 古いマンションの1階部分と倉庫を改装したオフィスデザイン会社addalpha(アドアルファ)さん。
オフィスのデザインやCGパースを作っているので、煮詰まったときは外で一服。たまに、会議も道端でしてみたり。
そんな新しいオフィスライフを満喫していると、訪れた人に御供所町の雰囲気の良さを感じてもらえるそうだ。
すると、間もなくして隣の建物に、本当に知人のカメラマンさんが移ってきた。
PHOTO: SHINYA MATSUSHIMA カメラマンの集まるアジト、Nouvell Gallery(ヌーベルギャラリー)さん。外にはお寺の門構えが見えて、新しさの背景に伝統が見え隠れする空間。1階の過ごしやすさを感じます。
こちらは花屋「月麦(つむぎ)」さんと博多織工房「博多TSUKURI堂」さんが隣合わせに。どちらも新しいのに下町風情に溶け込んでいる。
やはり、建物の1階に雰囲気の良いテナントが入ると、それだけで道の印象が変わる気がしてならない。
店が店を呼び、店に来る人が人を呼び、徐々にエリア自体が注目されていく。陽の当たらなかった通りが、いつの間にか眩しくなってくる。
どうやら、この流れは万国共通のようだ。
ちなみに、7月の山笠では、この御供所通りを駆け抜ける。伝統も所々に残っているのが御供所通りの面白さ。
そしてこの度、その「御供所通り」に町屋を改装したカフェがオープンした。
建物は、ほんの半年前までボロボロな状態だったが、オーナーさんが外壁など主要部分を改修し、福岡R不動産で「町屋再生プロジェクト!」というタイトルで募集した。
左から改装前→改装中→改装後。みごとな変わり様。 内見時はひどく荒んだ状態。外壁が壊れてる! 2階のスペースにオープンした「お菓子と珈琲 Simplicit'e(サンプリスィテ)」 店主の難波さんが1人で切り盛りしている小さなカフェ。店の扉を開けた瞬間に広がる、コーヒーと木の香りがなんとも癒し系だ。
お店の名前「Simplicit'e」はフランス語で、英語の「シンプル」に当たる。素朴な内装と素朴なお菓子、素朴なコーヒーをいただきながら、難波さんに尋ねてみた。
--いくつくらい物件見ましたか?
「1つ目です。初めて内見してすぐ決めてしまいました。2年くらい前からお店を出したいと考えていたのですが、この町家のイメージが思い描いていたイメージにぴったりだったので・・・。それからは一気に2ヶ月でオープンまで進みました。」
--人通りは少ない場所ですが・・・
「大人の女性が一人でも入りやすいお店にしたかったので、人の多い中心部でやろうとは思いませんでした。周りにお寺などもあり、お客さまが寛げる環境が気に入りました。仕事中にふらっと立ち寄っていただいたり、遠方からわざわざお越し頂いたり、皆さん思い思いにリラックスしていただいています。近くにもオシャレなオフィスがあったりするので、これからの通りの変化も楽しみです。」
個人的にもこの通りの変化は楽しみだ。さらに御供所エリア自体を活性化させようと、地域の方々と引越してきた若手クリエーターが手を組み、369プロジェクトという名前で活動を広げていくとのこと。今後も目が離せない。
お菓子と珈琲 Simplicit'e(サンプリスィテ)
福岡市博多区上呉服町3-4-2F
TEL:092-262-5012
営業時間 11:30~17:30 不定休
今回ご紹介した御供所通りの新鋭スポットはこちら。
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