もしも自宅が自分たちが住むためだけのものでなく、収入も生み出す家だったら。そんなことを考えてみたことはありませんか。
この素敵な自宅は、収入を生んでいる。 収入を生み出す家とは、建物の一部を賃貸として貸し出すことによって住みながらにして投資を兼ねた賃貸併用住宅という手法を用いること。商店街や古い問屋街のような町では、1階が店舗で上階が住居になっている兼用の一軒家や小ビルを目にすることがよくありますが、一般の人がマイホームの購入にあたって、自宅の一部を人に貸すなんてことは稼業が「大家さん」でもなければ馴染みのない話かも知れません。
どんなエリアや立地でも可能と言うわけではありませんが、例えば賃貸収入で住宅ローンの返済が賄えたら・・なんて聞いたらきっと興味が湧いてくる人も少なくはなさそうです。簡単に言ってしまえば「家が生み出す収入で家を買う」、そんな感覚に近い賢い住まいづくりの選択肢のひとつなのです。
Hさんとお会いしたのはサイトにお問い合わせを頂いて、福岡市の中心部、大手門にある売土地を一緒に見たのが最初でした。
募集当時の物件。ビルの谷間に古家がこじんまりと建っていました。 このエリアは、中央区の人気エリアにして商店街のような古き良き趣きのある通りに面しています。実際に物件もその昔はお茶屋だったそうで、間口は狭く奥に長いうなぎの寝床のような形状。当時は古家も残っている状態でした。
その形状に加え、敷地が約25坪の狭小地だったため、マンションを建てるには狭く、一軒家を建てるには幅がない。そんな間口に小さく建っていた古家の印象で柔軟にイメージができる人が少なかったのか、価格はかなり条件の良い坪単価が設定してあったのにも関わらず、密かに眠っていた物件だったのです。
見た瞬間に1階をテナントとして貸し出して、上を自宅にするという建物のイメージがすぐに湧いていたと言うHさん。投資をしながら自宅を買うという新たなストーリーがこの地で始まることとなりました。
プランを検討した際の模型。 --賃貸併用で住まいづくりをすることは探す段階で考えていたのですか。
「物件を探し始めた初期の段階では、中心部の物件に限らずマンションや閑静で緑豊かな山の手エリアも視野に入れていました。ただ、仮に中心部で立地のいい場所が見つかった時は一部を店舗にするのもあるかなと考えていました。
結果的にタイミングよく土地が見つかったというのも大きいですが、特に立地は良かったと思います。ここは古い町並みが残っていて福岡城の方に向かう「門」があった通りなんです、そういう歴史的な視点で見ても面白い場所です。」
実際に玄関を出て道路に足を踏み出すと福岡城跡地に残る櫓が見えてしまうのでびっくりです。 「あとは、土地の取得から大まかな建物のプランと建築費、テナント部分の賃料の見込みをシュミレーションしてみて予算の中でバランスのよい組み立てが出きそうだったので、イメージがグッと現実に近づいて来た感じでしょうか。土地は大きくないですが、商業地域なので建物を上に伸ばすことは可能で場所・プラン・コストが上手く整ったと思います。」
--建てるまで、住んでみてからのエピソードなんかはありますか。
「全体的には設計・インテリア・家具とそれぞれの分野を専門にする3人がチームのような感じで役割分担してつくりあげてくれました。プランは3階建と4階建を検討しましたが、最終的には予算とのバランスがとれて、空室リスクの少ない1階がテナントで2〜3階と屋上テラスを住居にする3階建プランを選択しました。
実は1階の入居者は、まだプランが決まる前に物件の近くにある飲食店に行った時、知人がちょうど飲食店舗を探している!とオーナーさんが紹介してくれて・・。不思議な縁と言うか、その後蕎麦屋をしたいというご本人にお会いして借りてもらうことが決まりました。なので、テナント区画のプランはできるだけ本人の希望を聞いて一緒につくったような形ですね。」
「おかげで完成してしばらくは帰宅時に蕎麦でシメというのが定番になっていました。自宅のキッチン以外に1階にダイニングがもうひとつあるような感覚ですよね。ただ、友人がお店に来ると必ず捕まって、上が自宅なもんだから逃げられないのが・・・(笑)」
と、言葉の割にはあんまりイヤそうでないHさん。
そして、実は最近ちまたで盛り上がっているこの大手門エリア。飲食店同士がコラボした飲み歩きのイベントを行ったりもしています。先日のイベント時には、1階のガレージを提供して、人をつなげる空間になったのだとか。地域の盛り上がりに貢献できるというのも、この住まいづくり形態だからこそできることでしょう。
右側が1階テナントの蕎麦屋さん。 住居部分は、幅がない分スキップフロアや吹き抜けで視界に変化をつけ、上に向かって開放されています。バルコニーや屋上テラスは外壁の建て方を工夫して、空は見えるけど周りからの視線が気にならない。都心にこれだけ自由度を持って住まいづくりができるのは本当にうらやましいです。
普段はこのガレージの住人でもある愛犬のラブラドールはすっかり近隣住民の人気者だとか。外観も古き商店街の趣きが残るこの通りに溶けこむような町家っぽさをイメージ。 プライバシーが確保されたテラスが心地いい。 冒頭でも書いたように、賃貸収入を想定する上でどんな立地でも適応できる選択肢ではないとは思いますが、実際にHさんのケースでは、ある程度の自己資金を入れた上で、毎月のローンの返済を賃料収入で賄いながら快適な暮らしを手にすることができています。今回のように新築でなく賃貸併用の中古物件でも然り、立地や価格、収益性を総合的に、柔軟に判断することにより、今までに考えもしていなかった住まいづくりの選択肢が見つかるかも知れません。