福岡は「便利」という言葉がよく似合う。買い物や食事、エンターテイメント(中洲を含む)などの消費スポットは洗練されているし、コンパクトなエリアに集約された都市生活は移動時間の短縮につながる。また、海へ山へ川へ、と自然との距離関係も抜群に良い。
そんな福岡においてさえ、あまりの近さに違和感を感じるモノがある。それは、博多湾に浮かぶ能古島(のこのしま)だ。
福岡県外の方のためにちょっと説明すると、住所は福岡市西区だから市内であり、愛宕浜の渡船場からフェリーで10分というアクセス。福岡の中心部から行っても40分もあれば着いてしまう。こんな身近に島がある、ということだけでも驚きに値するはずだし、航空写真で見てみるとその違和感はより一層強くなる。こんもり緑に覆われた島が博多湾にポツンと浮いている。
フェリーに乗って10分。出発したと思ったら、もう着いている。それくらい近い。
しかし、船から降りたってみると、10分前にいた高層マンションの建ち並ぶ都会の住宅街とはまるで反対の、スローな空気の流れる田舎景色が広がっているのだ。
奥の大きい方がフェリー。対岸のマンション郡が見えるほどの距離関係。 この島にはおまわりさんは1人だし、消防車はなく、火事があったら本土から船で出動するため、到着までに住民がみんなでがんばるというシステム。車検が切れた軽トラックが普通に走っていたり、収穫した果物のおすそ分けなんて光景も当たり前だ。街中に暮らしている僕らからすると、とんでもない田舎に来てしまったような感覚。
その島がこんな風になっていたり、
こんなカフェがあったり、
島からの景色がこんなことになっていたら、
「住んでみたい」と思ってしまうのも無理がない。
さて、前置きがかなり長くなってしまったが、今回のレポートは、福岡R不動産で博多区在住の浅羽さん一家が能古島に移住するお手伝いさせていただいたお話。
浅羽さんは様々な商品の企画の仕事(例えば有名なのは「こどもびいる」や「ジンジャーエールn.e.o」)を手がけている。
「商品開発という仕事上、自宅と事務所を兼用できるし、どこに住んでもよかったんです。海のそばや、景色の良いところがよかったので、糸島の海岸線沿いの物件なんかもたくさん探しました。いろいろ考えた結果、以前「能古島サイダー」という地サイダーの商品開発に携わらせていただいた経緯もあり、能古島に絞って探し始めました。」
ところが、島での物件探しというのは、そんな簡単なものではない。まず、不動産屋がない。そして、インターネットで探しても賃貸物件はまず出てこない。(売買物件はポツポツとある。)そんな状況で見つけるには、人ヅテしかない。このハイテクな世の中でも、やはり最後に頼りになるのは人間関係なのだ。
「とにかく能古島の知人に空き家がないか、聞いて回りました。すると、意外にもたくさんあるんですよ。空いている家は。でも、仏壇が残っているから貸せないとか、身内にしか貸したくないとか、諸事情によりなかなか借りられる物件に出会えない状況でした。たまたま僕らはラッキーで、何度も通っているうちに良い物件にめぐり合えたのですが。」
こうして巡り会ったのが、この戸建だった。
お世辞にもきれいとは言えないが、そうワガママも言ってられない。部分的に改装すればいいし、広い敷地にゆったりと建っているのも気に入った。目の前にはみかん畑があって、オーナーさんは「食べてもいい」と言ってくれた。
そしてなんと言っても感動したのは、この窓からの景色・・・
南向きに福岡の海岸沿い名所を一望できる。 こうして物件が決まり、R工事にて改装計画をスタートさせることになった。