中途半端なこだわりならやめた方がいい。遊び心を込めるなら、本気の趣味を、本気で遊ぼうじゃないか。
春吉の路地裏にひっそりと、しかし派手にオープンしたPUB「HUCKLEBERRY Fin club」にはそんなポリシーがぎっしりと詰まっている。
元々は「春吉全員集合」というタイトルで募集していたこの物件。ごく普通の古い戸建で、募集時はレトロなんて褒め言葉も浮かばないほどのボロさを醸していた。
春吉の中でも比較的天神に近い立地にあるものの、路地裏からさらに細い路地に入るマニアックかつ"絶対に"通りがかることがない場所にあったため、店舗で検討するも、決断しきれない・・・という方が多かった。
そんな時、店舗デザイン会社「ブンファクトファイブ」代表の山田さんが内見に訪れた。パンクヘアに80'Sのアメリカンロックスタイルのファッション、永遠のツッパリ少年という言葉の似合う外見は、奇抜なファッションの方が多い福岡R不動産のお客さんの中でも一際異才さを放っていた。
さらに、「パソコンの使い方?知らないですよ。」とアナログ人間のポリシーも貫く山田さんは、もちろんインターネットも使ったことがないため、知人が「福岡R不動産」のサイトで探してきたこの物件と出会ったのだった。
店舗デザインを仕事としている山田さんは、元々福岡中心部の路地裏飲食店を多数手がけていたので立地への違和感はなく、店としての営業よりも本気の趣味の場所づくりに重きを置いていて、かつデザインのショールーム的要素も含まれていたため、この物件に決めることにした。
かくして、このボロい戸建住宅は、店舗デザイン事務所兼PUBという用途で生まれ変わることになる。
壁や天井を丁寧に壊していくと、想像以上に味のある柱・梁が出てきた。 約1ヶ月の改装期間を経て完成したのがこちら。わかりづらいですが、頭上にはベンチがぶら下がっていたり、ピンボールが置いてあったり、と遊び心いっぱい。
個人的なイメージでは、映画バック・トゥ・ザ・フューチャーの中で、昔にタイムスリップした時の酒場のような感じ。別にその時代に酒を飲んでいたわけでもないけど、どこか懐かしさを感じることができる空間だ。
好きな物を集めて、好きなデザインを作って、好きな仲間と集う場所。
誰しも少年(または少女)であったころに、「みんなで集まる場所が欲しいよね」と話していたはずだ。その想いを、大人になっても持ち続け、少年のままの気持ちで形にしたのがこの場所である。
そんな懐かしい想いを再び思い出させてくれる空間で、楽しい気分になった。
ブラウン管の中では、全盛期のマイケルジャクソンがシャウトしていた。 2階にはドラムセットが飾ってある。 また、この店にはユニークなシステムがある。注文ごとに料金を支払うというのは一般的なPUBと同じだが、ここHUCKLEBERRY Fin clubではお店専用のコインを購入する形式なのが面白い。
1枚300円のコインを購入(チャージ)してコインで支払う。すべての飲み物・料理が300円、600円、900円・・・とコイン何枚分という料金設定になっているので、とてもわかり易い。
場所はわかりづらく、不定休でもあるが、めげずに行ってみて欲しい。きっと遊び方を気づかせてくれるはず。
HUCKLEBERRY Fin club(ハックルベリー フィン クラブ)
福岡市中央区春吉2-7-7
TEL:092-739-7277
営業時間:18~24時
※不定休(基本は火・水・金・土が営業日)