福岡県八女(やめ)市で始まった「里山の集合住宅PROJECT」。2018年夏にいよいよ入居も開始し、実際に移住者が里山での新たな生活をスタートしました。ところで、そんな八女市ってどんな場所なの?というお声をいただくことも多くなり、今回は、八女移住を検討する際のエリアガイド入門編と題して、八女のエリア解剖をテーマにお届けします。
(八女市が誇る広大な茶畑、先に薄っすらと見えるのは市街地) 八女はとにかく広い!
現在の八女市は、1市3町2村の合併を経て、福岡県で2番目に広い面積を持つ市となりました。その多くは山林や農地が占めており、ざっくりと環境を区別するならば、長閑な町並みが形成された市街地エリアと広大な自然に恵まれた山間部エリアの2つに分けられます。ちなみに山林面積は福岡県で1番広い約31,000ヘクタール。その数字が示すように、自然豊かな暮らしも実現しやすい環境にあります。
また、福岡県の南部地域に位置する八女市は、基本的には福岡市や県南部の中核都市である久留米市の経済圏にあります。ただ、視点を福岡市と反対側にずらしてみると、実はわりと近くに、九州で福岡市に次ぐ大都市の熊本市も存在します。さらに九重や阿蘇と言った壮大な自然や、登山、温泉などで人気の観光地も意外と圏内、見方によっては行動範囲も広く楽しめそうな絶妙な立ち位置とも言えます。逆に、八女市は海には面していません。海が身近にある福岡市なんかに比べると海水浴はわざわざ遠出のイメージ、むしろ川遊びが主流です。
エリアの覚え方は旧市町村と谷筋で
とにかく広い八女ですが、エリアを把握するには合併前の旧市町村で理解するのが1番。実際に地元の方々と話していても「あ〜、◯◯(旧市町村名)ね。」と言う会話が頻繁に聞かれます。地域の方々は地元愛もとても強いので、少しでも旧市町村エリアのことを理解して会話ができるとコミュニケーションも取りやすいはずです。
下の地図は、旧市町村でエリア分けした位置図。街の中心である八女エリアから山間部に向かって上陽・星野方面と黒木・矢部方面、2つの谷筋が通っています。まずは場所を覚えつつ、エリアのことを把握しましょう。
【八女エリア】
まさに現在の八女市の中心市街地があるのが八女エリアです。八女市役所を始め、八女IC、総合病院、ロードサイド店舗なども充実しており、八女で街と言えばここ。なので移住を検討する際に、一般的な賃貸物件や貸家、売物件なども探しやすいのはやはりこのエリアとなります。
八女の中心部には、福岡県内でも有数の伝統的建造物群保存地区で、白壁の町並みが有名な福島地区があります。地域のアンテナショップ「うなぎの寝床」さんを始め、町家をリノベーションした宿・カフェ・飲食店、さらにちょっとディープなスポット土橋市場など、古き良き日本の風景を感じながら、ゆっくりとまち巡りをしてみるのもオススメ。きっと豊かな自然とは一味違う「八女」らしさを感じることができるはずです。
また、その中には若い世代や移住者がオーナーのお店も多く存在しており、移住+お店を始めたい!という方も注目しておきたい場所です。
(福島地区の伝統的建造物群保存地区) (町家を改装した地域のアンテナショップ「うなぎの寝床」の店内) (左上:「うなぎの寝床」の外観/右上:旧寺崎邸、普段はショップですがイベントなども行われます/左下:白壁の町並みにこだわりのお店が隠れています/右下:土橋市場の風景) 【立花(たちばな)エリア】
立花エリアは、中心市街地ではないものの、比較的その近場にあるエリア。なので、市街地と山間部の狭間にあるような存在で、山林というよりは田園、集落と言うよりは住宅地というような風景もそれなりに広がっています。八女の特徴的な環境という意味ではどっちつかずですが、それ故に街にも程よい距離感でバランスの取れたエリアとも言えます。八女の中ではみかんやキウイなどの果樹、たけのこなども有名です。
個人的には、矢部川沿いの河川敷に築かれた川遊びスポット千間土居公園の樹齢300年を超えるクスの大木や桜並木は足を運んで欲しい場所なので是非。
もし、中山間部よりも市街地近くに住みたいという場合は、八女エリアとともに立花エリアも候補としてみるのがいいと思います。不動産市場もそれなりにありそうですし、大通りの裏手には旧街道の通りがあったりして、歴史を感じる趣きのある建物が少しだけ残っているので、もし借りれたりしたら面白いかも。
(約2kmに渡り河川敷に広がる千間土居公園のクスの大木並木) (左上:立花の風景/右上:夏は子どもたちで賑わう千間土居公園の河川敷/左下:道の駅たちばな、2011年直売所甲子園グランプリという経歴の持ち主/右下:地元の果物を原料としたワインも製造販売をしている立花ワイン工場) 【黒木(くろぎ)エリア】
黒木と言えば、かの有名な女優さんの出身地としても知られていますよね。どなたかわかりますか?ヒントは地名でもある「黒木」そのままです(笑)。
左右に広がる八女の中では地図で見ると真ん中あたりに位置する黒木。とは言え、その大部分は山林や農地で、やはりお茶の生産が盛んです。ただ、ちょっと面白いのは、黒木にも福島地区のような伝統的建造物群保存地区があり、旧黒木町の中心地を少し散策してみると白壁の建物や雰囲気の良い独特な風景が残っていたりします。その他にも国指定の天然記念物であり約3,000平方メートルに藤棚が広がる黒木大藤、キャンプや宿泊ができ、サッカー場がある施設グリーンピア八女など、観光地としての側面が強いのは黒木の特徴のひとつ。
そんな黒木に関しては、立ち位置的にも市街地への距離感が近すぎず遠すぎずで程よく田舎暮らしを始めれる環境と言えます。不動産市場は手薄な状況ではあるものの全く無いわけでもないので、星野、矢部と言った奥深い山間部よりはまだ探しやすいかも知れません。
(樹齢600年を超える黒木の大藤、例年、シーズンには約20万人が訪れるそうです) (左上:旧黒木町の中心部/右上:津江神社が見えてきたら黒木に着いたなぁという感じ/左下:伝統的建造物群保存地区/右下:中心部以外は長閑な風景が広がります) 【矢部(やべ)エリア】
八女の中山間部は総じて「奥八女」と呼ばれることがありますが、矢部はその中でも、特にディープな山間部に位置します。山の谷間に旧矢部村の街や集落などがあり、もともとは林業やお茶づくりを生業にされてきた方が多く住んでいた地域だけに、本格的にダイナミックな自然と寄り添う環境を求めるならば矢部は筆頭候補。きれいな水と風光明媚な美しい風景には本当に心癒されるものがあります。
また、矢部には八女の地名の由来と言われ、日本書紀に記された八女津媛(やめつひめ)が祀られた八女津媛神社があり、大自然の中に神聖な雰囲気も漂うエリアです。
但し、広い八女だけに市街地に出るだけでも車で1時間程度を要する点は注意も必要。さらに特に矢部は昼夜の気温差や冬場の積雪、凍結などリアルな山間部の暮らしの厳しさを目の当たりにする場面も少なくないはず。しっかりとした心構えと準備も必要です。また、不動産市場はほぼ成立しておらず、空き家バンクや地縁のある人のネットワークを駆使して物件を探すことが必要になりそうです。
(矢部エリアではこんな風光明媚な風景が日常です) (左上:八女津媛神社/右上:自然の川を活かした河川プール/左下:きれいな空気と水、高地の環境はお茶づくりにおいても矢部の特徴/右下:旧矢部中学校の校舎を利活用した文化館、八女の民族文化も学べてオススメ) 【上陽(じょうよう)エリア】
八女市街地から車を20分も走らせば、次第に山々に囲まれた風景に変わっていきます。ちょっと景色が変わってきたな!と思い浮かんだとき、それは上陽エリアへ入ってきた合図です。
八女市北部に広がる耳納山地に含まれる上陽エリアは、一部を除けばそのほとんどが山地で、林業やお茶の生産が中心のまち。
さらにホタルの里として有名な清流星野川の中流に位置する上陽では鮎釣りなんかも有名。街を少し離れ、里山暮らしを始めたい方には是非候補として検討して欲しい豊かな自然環境があります。
ちなみに、里山の集合住宅PROJECTが始まったのも、この上陽エリアの久木原地区。中山間地域に入ると一般的な不動産市場が成立しておらず、住んでみたいけど物件がなかなか見つからないというのが実情です。なので、まずはこのプロジェクトで出来上がった賃貸住宅で、実際に里山暮らしを始めてみてはどうでしょう。地域住民と入居者の関係づくりのサポートもしていますので、田舎暮らしは始めてみたいけど、いろいろ不安な面も・・・という方にも最初のステップとしてオススメです。
(左上:上陽のメインストリート/右上:上陽まで来ると町そのものが山に囲まれています/左下:里山の集合住宅PROJECTの賃貸長屋住宅からの風景/右下:ほたるが有名なだけにこんな施設も) (里山の集合住宅PROJECTで出来た賃貸長屋住宅、地元八女の杉材がふんだんに使われています) 【星野(ほしの)エリア】
上陽エリアから、さらに奥の山間部に進むと、日本で最も美しい村連合に加入している星野エリアに辿り着きます。清流星野川が流れ、棚田や茶畑が広がる美しい里山の風景は、日本の里100選や日本の棚田100選にも選ばれており、八女以外の方でも星野村という地名を知っている人は多いかも知れません。標高の高い山間地のため、気候風土を活かした玉露の生産なども盛んで、さらに星野と言えば、まさに星がきれいで有名な場所です。
そんな星野で過ごす生活は、いわゆる田舎暮らしのイメージがそのままぴったりな場所ではないでしょうか。やはりこの星野らしい自然環境や風景、雰囲気が気に入り移住される方も少なくないようです。さらに、星野村中心部から八女市街地までは車で約40分程度の距離とあって、意外と街への通勤等が圏内なのも大きいかも知れません。ただ、季節ごとの自然環境など街中の暮らしとは違う点はしっかり理解しておく必要があります。
そんな星野ですが、いざ住みたいとなっても一般の不動産市場が成立してないのが山間部の宿命です。空き家バンクや地元の方に協力してもらって探すのが得策と言えそうです。
(風光明媚な自然の中に星野村はあります) (左上:星野村の中心地、と言っても長閑な感じです/右上:山の手に行けば見渡す限り緑/左下:是非立ち寄って欲しい古窯星野焼の「源太窯」/右下:山間部の集落を歩いていたらこんな光景も) 駆け足で来ましたが、なんとなく八女のエリアのことわかってきましたか?
おおまかには市街地と山間部という棲み分けでご説明はしましたが、八女の魅力のひとつはそれぞれのエリアにそれぞれの旧市町村が培ってきた歴史や文化があることなのかもしれない。取材中にそんなことを、ふと思いました。
だからこそ、どのエリアに行っても地元への愛着や誇りが強いですし、少子高齢化や過疎化などネガティブな話題がつきものの地方ですが、八女で地元の方々と話していると、なんだかむしろポジティブな印象を受けることが多い。
それは、街にも深い山の奥にも確かにしっかりとした人の営みがあり、愛する地元を良くしていこうと言う強い意志があるからのように感じます。
だから、僕にとっては6つのエリアどの地域もそれぞれが好きな場所。みなさんもゆっくり八女を巡り、自分にあった場所を見つけて欲しいと思います。
物件情報:「里山のミライをつなぐ集合住宅」はこちら。